「妊娠しているかも?」と思っても、あまりに早い段階では、きちんとした検査結果がでないこともあります。市販の妊娠判定薬は便利ですが、子宮外妊娠などの危険な妊娠でも陽性反応が出る場合があります。判定薬だけで結果を判断せず、毎月規則正しく月経が来ている人なら、「月経が1~2週間以上遅れた」頃が目安となります。赤ちゃんが無事に育っているかどうかを確認するためにも、必ず産婦人科の診察を受けましょう。
服装や持ち物をチェックしましょう
初めて産婦人科で診察を受けるときの服装や持ち物を確認し、準備をしてから出かけましょう。
事前に電話で受診したい旨を伝えたほうがスムーズです。
<持っていくもの>
健康保険証・母子健康手帳
正常な妊娠・出産には保険は適用されませんが、トラブルや手術には適用されます。
妊娠が確定したあとは母子健康手帳を役所でもらい、以後、健診時には持参しましょう。
手帳・筆記用具
医師の説明や質問したい内容をメモしておくと便利です。
手ごろなサイズを選んでバッグに。
キャンデー
レモンやペパーミント味のキャンデーなど、つわりで気分が悪くなったときに備えて持参すると
よいでしょう。
基礎体温表(初診時)
妊娠の話や排卵日を知るのに役立つので、1カ月以上つけている人は持参しましょう。
本
文庫本や雑誌など、待ち時間が長いときに備えて持っていくといいでしょう。
財布
初診は少し高めなので、たりないことのないよう余裕をもって1~2万程度持参を。
受診はこんなスタイルで!
メイク:顔色がわかるようにナチュラルメイク。
診察・健診では顔色から健康状態をチェックすることも。
ファンデーションを厚く塗ったり、派手な色のチークやアイシャドウは控えて、
ナチュラルメイクを心がけましょう。
服装:前あきでそでがまくりやすいものを。
おなか部分だけを出すことも多いので、上下が別々になっている服を。トップスは前あきタイプだとスムーズ。パンツ派のママにはおしりが隠れる丈のAラインのトップスがお内診時にはすすめ。
妊娠中期以降は上下に分かれた服を
妊娠4カ月以降は腹囲測定や経腹超音波検査があるため、上下に分かれた服装がおすすめ。
ストッキングやタイツより靴下
足に触れてむくみの程度を調べることもあるので、ストッキングやタイツよりもソックスがおすすめ。
足の冷え防止になり、内診で下着を脱ぐときもはいていられます。
脱ぎ履きしやすい靴にしましょう
靴底がフラットだと歩きづらい場合もあるので、ヒールの高さは3cmくらいまでに。
体重測定・診察台にあがるなど、靴を脱ぐシーンも多いため、ひも結びが必要な靴は避けて脱ぎ履きしやすいものを選びましょう。
初診から出産までの妊婦健診スケジュール
妊娠初期
・妊娠2カ月(4~7週)~妊娠3ヶ月(8~11週)
健診(定期健診)ですること(1~2週間に一度)
・尿検査
・体重測定
・血圧測定
・超音波検査
・胎児心拍の確認
・問診(必要に応じて)
・内診
・血液検査
妊娠中期
・妊娠4カ月(12~15週)
健診ですること(4週間に一度 )
◎妊娠4カ月の健診から腹囲測定、浮腫検査が加わります。
初期にクラミジア検査、細胞診、必要に応じて、細菌培養検査、
乳房の診察を行います。
・妊娠5カ月(16~19週)~ 妊娠6カ月(20~23週)~ 妊娠7カ月(24~27週)
健診ですること(4週間に一度 )
◎妊娠5カ月以降は、4カ月の健診内容に子宮底長測定が加わります。
貧血検査のほか、必要に応じて、おりものの細菌培養検査などを行います。
妊娠後期
・妊娠8カ月(28~31週)~妊娠9ヶ月(32~35週)
健診ですること(2~3週間に一度)
貧血を調べるほか、必要に応じて、おりものの細菌培養検査などを行います。
※必要に応じて乳房の診察を行います。
臨月
・妊娠10ヶ月(36~39週)
健診ですること(1週間に一度)
臨月(10カ月)に、内診やノンストレステスト、必要に応じて骨盤X線検査
などを行います。
※ここでは妊娠初期の定義について、「産科婦人科用語集・用語解説集(日本産科婦人科学会)」に
従い13週6日までとしています。
妊婦健診の流れ
1:尿検査
・初診は妊娠反応を、健診では尿糖や尿タンパクをチェック
初診では妊娠反応を、尿中のホルモンで確認します。
以降は妊娠糖尿病の早期発見のために尿糖、妊娠高血圧症候群や腎臓のトラブルを発見する手がかりとして尿タンパクなどを調べます。
妊娠中は循環血液量が多くなり、腎臓に負担がかかます。
そのため尿タンパクや尿糖が+になりやすい傾向があり、尿タンパク+が続く場合は腎臓のトラブルや妊娠高血圧症候群が疑われます。
受け方のコツ
●尿糖が出ることもあるので検査前に甘いものをとりすぎない。
●少し排尿してから中間尿を採る。
●出ない場合は少量でもOK(20ccが目安)
Q:尿の中にタンパクや糖が出ると、なぜ問題なの?
A:腎臓の働きが低下しているサインです
腎臓の働きのバランスが低下していると、血液をろ過する腎臓の機能がうまく働かず、血液中のタンパクや糖が尿中にもれ出てしまいます。
尿にタンパクや糖がでるのは、腎そのサイン。
尿タンパクは妊娠高血圧症候群の症状の一つであり、尿の中にタンパクや糖が出たら、
休養と塩分を控えた食事を心がけましょう。
2:体重測定
・適正な体重増加が安産の目安になります
妊娠前の体重と比較して、体重の急激な減少や増加がないかをチェックします。
妊娠中、急激な体重が増加すると妊娠高血圧症症候群や妊娠糖尿病、産道に脂肪がついて難産になるリスクが高まります。
そのため、体重を管理していく必要があるのです。
妊娠前の体形から算出するBMI(体格指数)が、適正な体重増加を判断する基準になります。
受け方のコツ
●薄手の服で測定しましょう
●冬場はカーディガンなど羽織っていけば着脱が楽
●家でもマメにチェックしましょう
Q:妊娠中、体重はどれくらい増えていいものなの?
A:妊娠前の体重によって目安は異なります
BMIの数値が18.5未満ならやせ形、18.5以上25.0未満なら標準形、25.0以上の場合は肥満です。
それぞれの適正な増加曲線に合わせて、体重管理をしていく必要があります。
「肥満形」の妊娠中の体重増加の適正量は約5kg、「標準形」は7~12kg、「やせ形」なら9~12kgが望ましいでしょう。
3:血圧測定
・初診の血圧の数値が今後の血圧の基準になります
血圧は、妊娠高血圧症候群の早期発見のために測定します。
初期に測定した血圧の数値は今後の基準になりますから初期から高めな人、もともと高血圧の人は
注意が必要です。
妊娠20週以降に、収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上、拡張期血圧(最低血圧)が90mmHg以上が持続して認められる場合、妊娠高血圧と診断されます。
受け方のコツ
●余裕を持って産院へ
●袖がまくりやすい衣類で
●自動血圧計は、ひじが測定口にきちんと当たるように
Q:自動血圧計だと、数値が高めに出ることがあります
A:リラックスして測りましょう
自動血圧計の場合、産院の待合室などに設置してあると人目が気になって高めの数値になってしまう場合も。また、体を動かした後は血圧が上がるので、あわてて産院に駆け込んですぐ計測すると、数値が上がってしまうこともあります。
計測前は、深呼吸して気持ちを落ち着かせ、リラックスしてから測りましょう。
4:内診
・子宮や卵巣の状態を必要に応じてチェックします
下半身の下着をとり、専用の内診台にのって内診を受けます。
医師が膣に指や器具を挿入して、子宮や卵巣の状態をチェックする診察です。
初期の健診では子宮や卵巣の異常、中期は子宮口のかたさや開き具合で流産・早産の傾向を見るため、外陰部の視診を行い、膣の中に片方の手の指を入れ、もう片方の手でおなかの上から軽く圧迫して、子宮の大きさやかたさ、卵巣の状態などを診ます(双手診)。
腔鏡と呼ばれる鳥のくちばしのような形の器具を入れ、壁の中を診察することもあります。
後期はお産の時期や進み具合を内診によって判断します。
受け方のコツ
●深呼吸してリラックス
●ゆっくりと口から息を吐く
●おなかに力を入れない
Q:あそこの毛は切ったほうがいいの?
A:切る必要はありません
陰毛が長くても短くても、診察に支障はありません。
逆に陰毛を切る際に、外陰部に傷をつけて、そこからばい菌が入ってしまうことが心配です。
陰毛を切る際は、十分に気をつけましょう。
5:超音波検査
・初診では正常妊娠かを判断し、赤ちゃんの成長を確認します
初診や初期の健診では、近距離から細やかな情報を得られる「経膣プローブ」を膣内に挿入し、妊娠しているかどうか、正常妊娠か、子宮筋腫などのトラブルがないかを確認します。
妊娠12週ごろから、より広い範囲を診ることができる「経腹プローブ」をおなかに当てて、赤ちゃんの発育や胎盤の位置などをチェックします。
受け方のコツ
●超音波検査の画像は尿がたまっていると見えにくいのでトイレを済ませてから受ける
●おなかの力を抜いてリラックス
Q:3Dや4Dは、どんなときに撮るの?
A:赤ちゃんの体の表面を見るときに使います
超音波画像には通常の検査で使う2次元画像の2Dの他、2Dを重ねて立体的に再現する3D、さらに3Dを動画にした4Dがあります。
赤ちゃんの顔や体の外側を観察するために3Dや4Dを使用することがありますが、必ずしも必要ではありません。
6:浮腫検査
・足のすねを押してむくみをチェック
浮腫とはむくみのこと。
診察台にあおむけに寝て、足のすねを押してへこみを確認します。
むくみは妊娠高血圧症候群の前兆として現れることがあります。
押したあとが戻りにくい場合は、塩分摂取を控えるなど、食事の注意が必要です。
受け方のコツ
●むくみやすい人は午前中に受診する。
●素肌に触れて確認するので、ストッキングや長いタイツは事前に脱いでおくこと
7:妊娠4カ月ごろから腹囲測定
・赤ちゃんの大きさや羊水の量を知る検査です
あお向けになり、一番大きくふくらんでいるおへそ回りの周囲を測ります。
おなかの大きくなり具合や、羊水の量、赤ちゃんが順調に育っているかを超音波検査と併せてチェックします。
受け方のコツ
●おなかを出しやすい服装で受ける
8:妊娠5カ月ごろから子宮底長測定
・子宮の大きさの変化を継続的に測定します
赤ちゃんの成長具合や羊水量の異常を知る目安となる、恥骨のいちばん上から子宮のいちばん上(子宮底)までの長さを測ります。
受け方のコツ
●恥骨まで下ろせるパンツやスカートがおすすめです
9:血液検査
・初期・中期・後期と最低3回チェックします
血液検査は妊娠全期間を通じて3~4回行い、母体全体の健康状態を診ます。
貧血検査、B型肝炎や梅毒などの感染症、肝臓・腎臓の機能など早期発見が大切なため、妊娠初期の血液検査は多岐にわたります。
受け方のコツ
●袖をまくりやすい衣類で
●注射が苦手な人はリラックス
●採血後は、2~3分押さえて止血を
・妊娠初期の主な血液検査の内容
【血液型検査】
妊娠中や出産時のトラブルなど緊急時の輸血に備え、ABO式とRH式で検査を行います。
ママがRh(-)の時には血液型不適合妊娠のリスクがあります。
【血糖検査】
妊娠糖尿病かどうかを判断するため、血糖値を調べます。
中期には糖負荷試験をし、数値が高い場合は尿検査と併せて判断し、食事療法などの治療を行います。
【貧血検査】
妊娠中は鉄欠乏症になりやすいため、妊娠中2~3回検査を行うのが一般的です。
貧血がひどいと妊娠中から出産後まで影響する場合があるため、貧血と判断された場合は食事指導や鉄剤の処方が行われます。
【梅毒血清反応検査】
性感染症の一つです。
梅毒にママが感染していると、流産・早産の原因にもなり、胎児の先天性梅毒を引き起こすこともあります。発見した場合は治療を行います。
【HBs抗原検査】
B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを確認します。
分娩時や出産後に、母子感染するのを予防します。
【HCV抗体検査】
C型肝炎は未だ不明な点が多く、血液を通して母子感染する可能性があります。
このため、C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べます。
【HIV抗体検査】
感染していると分娩時に母子感染の可能性がある、「エイズ(後天性免疫不全症候群) ウイルス」に感染しているかどうかを検査します。
【風疹抗体価検査】
風疹に対する免疫(抗体価)を検査。
抗体価は8の倍数で示されます。数値が高いときは再検査をします。
【トキソプラズマ抗体検査】
任意で検査をします。
猫の便や生肉などの原虫から、トキソプラズマ症に感染しているかどうかを調べます。
【HTLV-I検査】
ママが感染していると母乳を介して、赤ちゃんに感染する可能性がある、「成人T細胞白血病(ATL)」のウイルスの有無を調べます。
【不規則抗体検査】
トラブルの原因となる血液中の抗体をチェックします。
血液型(とくにRh式)がママと赤ちゃんで異なる場合、赤ちゃんに黄疸が出る可能性があります。
【サイトメガロウイルス抗体検査】
妊娠中に初めて感染すると胎児に影響する可能性があります。
多くの人が免疫を持っていますが、最近、免疫を持たない人が増加しており免疫(抗体価)を調べます。
10:問診
・初診では出産予定日を確認できない場合もあります
各検査が済んだら、妊娠の有無、妊娠していれば赤ちゃんの状態や今後の妊娠生活について、医師から説明を受けます。
正確な妊娠週数や出産予定日がわかるのは妊娠9~11週ごろで、この出産予定日を元に、赤ちゃんの成長を診ていきます。
体調やお産について気になることがあったら、遠慮せずにどんどん質問をしましょう。
聞き忘れがないように質問事項を予めメモの用意を。
医師に聞きにくいことは助産師や看護師に聞くのもOKです。
Q:妊娠6週に入るのに、胎嚢が見えない
A:着床した時期にズレが生じることも
正確な出産予定日がわかるのは、妊娠9~11週ごろです。
初診では28日周期で妊娠週数を数えるため、月経周期が28日型でない人や不順な場合は着床した時期にズレが生じることもあります。
受け方のコツ
●聞きたいことをあらかじめ整理
●要領よく、まとめて聞く
●医師の説明はメモをとる
・出産予定日の考え方
排卵日が推定できる場合.・・・2週0日に266日を加えた日付が出産予定日となります。
排卵日が推定できない場合・・・最終月経開始日に280日を加えた日付が出産予定日となります。
・出産予定日と正期産
妊娠週数は最終月経開始日を0週0日として数え、妊娠40週0日(満280日)を出産予定日と呼びます。
ただし出産予定日は目安です。
妊娠37週0日~41週6日の5週間にお産があれば、正常なお産といえます。
・早産・・・妊娠22週0日~36週6日
・正期産・・・妊娠37週0日~41週6日
・過期産・・・妊娠42週0日~