はじめての授乳 授乳の基礎知識

産後

産後、まず最初にする赤ちゃんのケアは授乳です。
初めての育児ですと、母乳がきちんと出るか、赤ちゃんが上手く飲めるか、母乳とミルクどちらが良いのかなど不安や疑問も多いと思います。
母乳で育てたいと考えるママは多くいますが、医学上、必ずしも母乳でなくてはならないということはありません。母乳とミルクでは知能や味覚に変化が出るというのも不確かな情報です。
れぞれによさがありますので、ママに合うほうを選んでください。
母乳でもミルクでも、なるべく赤ちゃんに飲ませてあげたいのが、産後すぐ~5日目に出る「初乳」です。初乳は黄色っぽく粘り気があり、免疫成分が多く含まれています。
この成分が生後6ヶ月ほど赤ちゃんを感染症から守ってくれるので、少量でも飲ませられるとよいでしょう。

母乳が出る仕組み
母乳はお母さんの血液から作られ、プロラクチンというお乳の産生に預かるホルモンの働きによって乳腺で作られます。この乳腺は妊娠中、他のホルモンの働きにより発育しています。
妊娠中はお乳を作るプロラクチンがたくさん分泌されているのですが、このホルモンが乳腺に働きかけるのを胎盤から出るホルモンが抑制していて、妊娠中はごくわずかしか乳汁分泌は見られないようになっています。しかし、出産後、胎盤が母体の外に出ると、プロラクチンの働きで母乳が作られ、お乳を乳腺から押し出すホルモンの働きで、母乳が出る仕組みになっています。
さらに、産後は赤ちゃんがおっぱいを吸うことで、これらのホルモンの働きはますます活発になり、
母乳が繰り返し作られていくというプロセスがあります。

母乳とミルク
現在のミルクは母乳に近い成分で作られているため、栄養的には母乳と大差ありません。
しかし、生後10日以内の赤ちゃんはまだ肝臓の処理能力が未熟で、ミルクの消化吸収は大変な負担となります。母乳は負担をかけないで消化吸収されるため、生後10日以内は、量が少なくても、母乳をあげることをおすすめします。免疫に関しては母乳が最も優れています。
生後6週まではミルクと混合にするなどして、たとえ少量でも母乳をあげてください。
生後間もない時期は、赤ちゃんの吸う力は弱いので上手に飲むことはできませんが、1ヶ月もすれば
吸う力はグンと強まるので、根気よく吸わせているうちに母乳が出ることが多くあります。

母乳のメリット・デメリット

メリット
・赤ちゃんの免疫力が上がる
・ママの体重が落ちやすい
・ママのからだが回復しやすい
・閉経前乳がん、卵巣がん、子宮体がんなどのリスクを減少させる
・家計にやさしい
・哺乳瓶の洗浄などの手間がない

デメリット
・禁酒が基本なのでお酒好きのママは控える必要がある
・乳房のトラブルが起きることがある
・赤ちゃんを他の人に預けにくい

ミルクのメリット・デメリット

メリット
・赤ちゃんがミルクを飲んだ量がわかる
・ママ以外も授乳ができる
・赤ちゃんの腹持ちが比較的よい
・ママが薬やお酒を飲める

デメリット
・ママの子宮回復に時間がかかる傾向がある
・コストがかかる
・調乳などの手間がかかる

母乳の出がよくなるまでは、母乳→ミルクの順にあげるとよい
出産後もなかなか母乳が出ないというママも多くいます。
ママは繰り返し赤ちゃんにおっぱいを吸わせることで、母乳を出すホルモンが分泌されて母乳の出が良くなります。そして赤ちゃんも吸うことに慣れてきます。
母乳が足りないうちは1回の授乳で母乳とミルクの両方をあげることもありますが、
順番は母乳→ミルクの流れが望ましいです。

おなかが空いているときにおっぱいを吸わせることで赤ちゃんもがんばってくれます。
母乳の出がよくなるまで数ヶ月かかることもめずらしくありません。
頻回授乳が母乳育児を軌道にのせやすくしてくれるので、まずは1日8~10回を目安に
2~3時間おきの授乳を繰り返してみましょう。

母乳が出過ぎる
母乳が出過ぎるという人は、おっぱいを少し冷やすとよいでしょう。
乳頭・乳輪、乳房全体は避け、乳房の脇側の上方を冷やすようにします。
あまり冷やしすぎると、母乳の出が悪くなってしまうので、様子を見ながら冷やすことが大切です。
また、たくさん搾乳するとより母乳が作られてしまい、悪循環になる事があります。
食事は高カロリーや乳製品の摂取を避け、夜は8時以降、飲水や食事を避けることで乳汁分泌は低下してきます。また、母乳外来や母乳マッサージを行っている助産婦さんに相談してみるとよいでしょう。

母乳をあげるときは、毎回抱っこの向きを変える
母乳は乳首の1ヶ所ではなく、乳頭から放射状に広がった複数の乳腺から出ています。
ずっと同じ抱っこで母乳をあげていると一部の乳腺に飲み残しがたまり、歯が増殖してしまったときに
乳腺炎につながることもあります。おっぱいをさわってみて、部分的にかたく感じるところがあればそこに母乳が残っているのかもしれません。
授乳の際はそのつど、「前回と違う抱っこ」を意識して、赤ちゃんに360度の乳腺からまんべんなく飲んでもらい、飲み残しがないようにしてください。
また、ずっと同じ姿勢で授乳しているとママも肩こりや腰痛になりやすくなります。
抱っこの向きを変えれば予防しやすいというメリットもあります。

上手な授乳のコツ

母乳の場合
乳輪が隠れるくらいまで深くおっぱいをくわえさせる。
飲ませやすいラクな姿勢で、赤ちゃんを抱っこする。
授乳クッションで高さを調整して、ママが前かがみにならなくても赤ちゃんと着できるようにする。母乳は両方の乳房から同量が出るように、毎回5分ずつを目安に、左右均等に吸わせよう

ミルクの場合
哺乳瓶は乳首部分がミルクで満たされるくらいまで傾ける。
おっぱいの近くに赤ちゃんを引き寄せる。
抱きづらいときは授乳クッションを使ってもOK。
ミルクは人肌くらいが適温。使った哺乳瓶は洗って煮沸・薬剤・電子レンジなどで消毒を。
飲ませるときは赤ちゃんの目を見てコミュニケーションをとる。

授乳の回数・量について
母乳の場合、赤ちゃんが一度に何ml飲んでいるのか正確にはわからないので、不足してないか不安になりますね。赤ちゃん用の体重計を使えば、飲む前と飲んだあとの体重の差で飲んだ量を量ることもできますが、必要量は赤ちゃんによっても異なります。
こまかく量を量るよりも、飲ませたあとの赤ちゃんの様子を見て判断しましょう。
いつまでも吸いついて離さないようなら母乳が足りていないのかもしれません。
吐いたり、ぐずったりしなければ赤ちゃんが欲しがるぶんだけおっぱいをあげましょう。
1ヶ月健診の際に出生体重から1㎏ほど増えていれば十分足りていたということ。
多少の増減はよくあるので、極端に減っていなければ心配しなくて大丈夫です。
回数については、生後1ヶ月くらいまでは、平均して1日8〜10回くらいが目安です。
最初は回数や間隔にとらわれることなく、赤ちゃんがほしいときに飲ませましょう。

おっぱいが張ってつらいときはマッサージや搾乳をする
おっばいが張る理由は、以下の通りです。

・産後、乳腺がまだ開通せず母乳が乳房にたまっている
・赤ちゃんの飲む量が少なく母乳を飲みきれていない

乳腺が未開通の場合は、指の腹で乳首をほぐして授乳を繰り返すことで、
赤ちゃんが徐々に吸えるようになります。
病院の助産師に開通マッサージをお願いしてもよいでしょう。
母乳を飲み切れていない場合は、搾乳でラクになります。
ただし、やりすぎると母乳がたくさん作られてしまい、おっぱいが出すぎでしまったり、
逆におっぱいが張りやすくなることもあるので張りが和らぐ程度に。
もし、おっぱいがカチカチになって痛みが出る場合や、赤く熱を持っている場合は、
炎症を起こしている可能性もあるため、医師や助産師に相談しましょう。

搾乳のコツ

・親指と人さし指でしぼる。
・乳房を支えるほうの手で乳房全体を数回ずつ動かしてから、乳輪部を親指と人さし指でつまむ。
・乳房や乳首には力をかけず、乳房の中心部に向かって力を入れてしぼる。
・位置を変えてしぼる。
・縦、横、斜めなど乳輪部の力を入れる位置を変えてしぼる。
・搾乳時間は10~15分を目安に。
・うまくできない場合は搾乳器を使うと上手に搾乳できます。
・すぐに母乳を飲まない場合は市販の母乳保存用バッグに入れておく。
・滅菌されているので通常の保存袋よりも専用バッグを使用するのがよい。
・冷凍しておくとママ以外の人も授乳できて便利。
・冷凍保存は3~6ヶ月可能。
・搾乳するときは、石鹸で手を洗ってから。

搾乳器のメリット・デメリット
搾乳器は空気圧によって母乳を吸引する道具です。
手で行なうよりも短時間で、手に負担をかけずに搾乳ができるので、乳腺炎などのママにもおすすめのアイテムです。電動タイプと手動タイプがあります。
搾乳しておけば、冷凍して保存しておりたり、ママ以外の人に授乳を頼むことができるので、
ママがまとまった睡眠をとりたいときや少しお出かけしたいときに便利です。
保存には、清潔な専用の保存袋を使用しましょう。
ただし、母乳が出ないときや乳首に傷があるときなどは、おっぱいを痛めてしまう可能性もあります。
そういったときは、無理に搾乳しないようにしてください。
また、搾乳しすぎると、母乳の分泌過多(おっぱいの出すぎ)にもなりますので、注意が必要です。

搾乳器はここをチェックしよう。

A:お手入れの仕方
煮沸、薬剤、電子レンジなどの対応している消毒方法を確認する。
手入れがラクなものがおすすめです。

B:購入かレンタルか
一時的な使用であれば、レンタルも視野に入れて。
レンタルで使用してから合うものを購入するのもアリ!

C:吸引圧・容量
搾乳できる量は母乳の出により異なる。
吸引圧が変えられるものだと、体調によって調整しやすい。

D:.素材
肌に直接触れるものなので、確認しておく。
肌にフィットしやすいシリコン製がおすすめ。

母乳育児のコツ
・こまめに睡眠をとる
産後、新生児のお世話をしているとまとまった睡眠をとれるのは長くて2~3時間ほど。
寝ている間に母乳が作られるので、こまめに睡眠をとるようにして。

・水分をとる
母乳は血液から作られているので、血行をよくしておきたい。
水分を多めにとって、サラサラ血液にしておくとよい。

・スマホはほどほどに
スマホなど、首や肩がこったり神経を刺激するものは控えめにする。
できるだけストレスをためないようにリラックスする。

・バランスのよい食生活
たんぱく質、野菜などがバランスよくとれる食事を基本にする。
1日3食しっかり食べることで質のよい母乳が作れる。

・からだを温める
からだを温めると血行がよくなり、母乳がたくさん作れるようになる。
肩甲骨周りをほぐしたり、寒い季節はカイロなどで温めたりするとよい。

授乳中の食事について(甘いもの・辛いもの)
授乳中のママも、時には甘いものや辛いものがが食べたい!!なんてこともあると思います。母乳の味が変化しないか気になる方もいるかと思います。
結論から言いますと、ママが食べたものの風味はある程度母乳に移ることがわかっています。とはいえ、母乳は血液で作られているのでママが食べたそのものの味が、そのまま赤ちゃんに直接届くわけではありません。いろいろなものをバランスよく食べましょう。